譲渡所得とは、土地や建物などの不動産、金などの貴金属、ゴルフ会員権などの資産を売り払った時の儲けのことです。
この譲渡所得ですが、所得税法上、少し変わった取り扱いが行われます。
今回は譲渡所得について最低限知っておきたい分離課税・総合課税の区別と長期・短期での税率の違いについてまとめます。
分離課税と総合課税の区別について
まず、譲渡所得で必ず覚えておかなければならないことは分離課税と総合課税の2パターンの課税方法があるということです。
譲渡所得という同じ所得区分に属していますが、分離課税になるか、総合課税になるかで、計算方法も税率も全く異なってきます。
土地・建物の売却による儲けに対しては、分離課税が適用され、金やゴルフ会員権の売却による儲けに対しては総合課税が適用されると覚えておきましょう。
自動車を事業用で使用していて売却する場合、譲渡所得の総合課税の対象となります!土地・建物と同じように譲渡所得の分離課税だと誤解している人が多いので注意してください。なお、日常の生活で利用している自動車はそもそも譲渡所得自体がかかりませんのでこちらも併せて押さえておきましょう。
分離課税の計算方法について
譲渡所得の分離課税とは、事業所得(個人の商売のもうけ)や給与所得(サラリーマンの儲け)などの他の所得の金額と区別し、単独で所得税額を計算する課税方法です。
分離課税の譲渡所得の金額の計算方法は以下のようになります。
譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)
上記の計算式で算出した金額に税率を掛けて分離課税単体の税額を算出することになります。
分離課税の長短での税率の違いついて
譲渡所得の分離課税の税率ですが、取得日から「譲渡日の属する年の1月1日までの」期間が5年超かで儲けに掛かる税率が大幅に異なってきます。
5年超の場合、分離長期と呼ばれ、所得税15.315%(復興特別所得税含む)、住民税5%の合計20.315%の税率になります。
5年以下の場合、分離短期と呼ばれ、所得税30.63%(復興特別所得税含む)、住民税9%の合計39.63%の税率になります。
例えば、土地を売却して5,000万円の儲け(分離課税の譲渡所得の金額)が出た場合の税金額を考えてみましょう。
分離長期⇒5,000万円×20.315%≒1,015万円
分離短期⇒5,000万円×39.63%≒1,981万円
実に966万円(1,981万円-1,015万円)も税額が異なってくることになります。
なお、分離長期と分離短期の判断基準は「譲渡日の属する年の1月1日」というところが非常に重要です。
「譲渡日」ではありませんのでくれぐれも気を付けてください。
例えば、2019年4月1日に土地を購入して、2024年10月1日に売却した場合、取得日から譲渡日までの期間は5年6か月になりますが、取得日から譲渡日の属する年の1月1日(つまり2024年1月1日)までの期間は4年9月しかありません。
この場合、分離短期になり、高い税率が適用されることになります。
総合課税の長短での計算方法の違いについて
譲渡所得の総合課税とは、事業所得(個人の商売のもうけ)や給与所得(サラリーマンの儲け)などの他の所得の金額と合算して所得税額を計算する課税方法です。
総合課税では、取得日から「譲渡日までの」期間が5年超かで税額が大幅に異なってきます。
5年以下の場合、総合短期と呼ばれ、以下の計算式で他の所得の金額と合算するための譲渡所得の金額を計算します。
譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-50万円
5年超の場合、総合長期と呼ばれ、以下の計算式で他の所得の金額と合算するための譲渡所得の金額を計算します。
{譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-50万円}×2分の1
計算式から分かる通り、総合長期に該当すれば、他の所得の金額と合算する譲渡所得の金額が2分の1になります。
なお、総合課税の5年の判断は取得日から「譲渡日までの」期間です。
分離課税の5年の判断基準とは異なりますので、注意が必要です。
例えば、2019年4月1日に金を購入して、2024年10月1日に売却した場合、取得日から譲渡日までの期間は5年6か月になりますので、総合長期に該当し、総合短期に比べて譲渡所得の金額が2分の1になります。
なお、これが土地の売却だったら、取得日から譲渡日の属する年の1月1日(つまり2024年1月1日)までの期間は4年9月しかありませんので、分離「短期」になるということです。
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