自分の不動産投資経験と税理士として関わったクライアントの状況を踏まえて、不動産投資初心者のためのマニュアルを作成しようと思いました。
不動産業に携わるようになって約15年が経ち、自分以外の税務クライアントの事例もたくさん見てきているので、かなり実務的なマニュアルになると思います。
今回は、第1回目で個人名義で投資用不動産を購入するまでの流れと注意事項について説明していきます。
投資用不動産を購入するまでの流れ
投資用不動産を購入するまでの流れは以下の通りとなります。
投資用不動産の選定
最近はインターネットの売買物件情報が充実していますので、ご自身が不動産投資をしたいエリアの物件を参考がてら見てみるのも良いかもしれません。
ただし、インターネットの情報は古い場合もあり、また囮広告の場合もありますので、本当に投資用不動産を購入する場合は、不動産会社を数店訪問してみて、信頼できる業者を見つけてください。
不動産投資は、購入価格によって勝ち負けがほぼ確定してしまいます。
負けの場合でも、不動産投資の失敗は即座に分かりにくく、徐々に資金繰りの悪化で自分の不動産投資が失敗しているかもしれないと気付き、売却時に本当の失敗が確定します。
失敗しないためにも、面倒な作業になりますが、必ず信頼できる不動産会社を足を使って見つけてください。
なお、不動産会社は、基本的に「表面利回り」(年間の家賃収入の総額を物件価額で割った利率)で投資用不動産を勧めてくることが多いです。
いざ、投資用不動産を購入してみたら、金利が高すぎて割に合わなかったり、建物がボロボロで必要以上に修繕費がかかってしまったりする場合があります。
よって、不動産投資を行う際は、「実質利回り」(年間の家賃収入から支払利息や固定資産税などの諸費用を差し引いたものを、物件価額で割った利率)を自分で計算して、購入の意思決定をしてください。
また、投資用不動産の修繕計画(必要性や時期)については、実際に不動産会社の担当者と購入予定物件を見学してから考えましょう。
その際に不動産会社の意見を参考にしつつ、実質利回りを計算するための追加で計上する修繕費を自分自身で判断する必要があります。
仲介を行う不動産会社の立場としては、不動産売買は成功報酬です。
よって、売買契約が成立しなければ、1円も入ってきませんので、すぐにとは言いませんが、なるべく早く投資用不動産を購入して欲しいところです。
しかし、投資者としては、人気物件を購入する場合を除いて、そこまで慌てる必要はないです。
ただし、投資用不動産の購入を躊躇していると、すぐに他の人の買い付けが入ってしまう場合も多々あります。
不動産会社の「早く申し込みを入れないと買えなくなっちゃいますよ。」は報酬を早く貰いたいという意図の時も勿論ありますが、「早く決めないと誰か違う人が買っちゃいますよ!」という本音の場合も多いです。
この辺は、ケースバイケースなので、様子を見て判断してください。
銀行との借入れの交渉
投資用不動産が決まったら、銀行との借入れの交渉をすることになります。
不動産会社に一任しても良いのですが、ご自身でも2年分の所得が分かる資料(個人事業主の場合は、「確定申告書」やサラリーマンの場合は、「住民税の納税証明書」)と購入予定の物件情報を持って銀行回りをしてみてもよいでしょう。
ご自身で動くことにより利率がより低い銀行が見つかることもありますし、融資の可否が変わる可能性もあります。
もし、旧耐震の建物や再建築不可の物件を購入する場合、融資をしてくれる銀行は限られます。
その場合は、ご自身で銀行を開拓しないと買えない可能性もあります。
ちなみに、利率は少し高くなりますが、ノンバンク系の金融機関であれば、旧耐震や再建築不可の物件であっても融資してくれる可能性はあります。
開業費の集計
不動産投資家(個人事業主)が開業をしよう決めてから開業するまでの間にかかった費用の総額を開業費といいます。
この開業費をきちんと集計しておけば、開業後の任意な時期に必要経費に計上できますので、節税効果が非常に高いです。
なお、開業費を計上できる期間には、具体的な制限はありません。
例えば、1年前から投資用不動産を探し始めていれば、その1年間で使用した金額が開業費として開業後に必要経費に計上出来ることになります。
不動産を内見に行くときの交通費、仲介予定の不動産会社への手土産、事業計画を立てるためのパソコンなど色々な購入費用が開業費の要件に当てはまる可能性があります。
不動産投資「前」でも必ず領収書を残しておきましょう。
不動産用銀行口座の開設
不動産投資家(個人事業主)として不動産賃貸業を行う場合、必ずしも専用の銀行口座を開設する必要はありません。
しかし、専用の銀行口座を作成しておけば、専用口座にあるお金は必ず不動産投資用のものであり、売上の計上漏れや経費の計上漏れを防ぐことが可能になります。
また、個人通帳との分別管理もできるので、経費の私的な使用の疑いもなくなるため、税務調査の時に指摘される事項も減り、結果的に余計な税金を増やさない効果が期待できます。
なお、専用の銀行口座とは特別な銀行口座という意味ではなく、ご自身がお持ちの普通預金口座の残高を一度0円にして、不動産投資専用として利用することをいいます。
投資用不動産購入時の注意事項
個人名義で投資用不動産を購入する場合に、どうしても注意して頂きたい事項が1つだけあります。
年度の不動産投資の実績が赤字の場合には、土地の借入金に対する利息は赤字金額から除外されるという事項です。
不動産所得が赤字の場合は、理論上は個人で商売を営んでいる人の事業所得やサラリーマンの給与所得と相殺出来ますが、上記の注意事項により、実際の実務の現場では、不動産所得が赤字になっても事業所得や給与所得と相殺できないことになります。
分かりにくいので、例題で確認してみましょう。
上記注意点は、不動産所得以外の所得がある人が、不動産所得を利用して簡単に還付を受けられないようにするためのかなりきつめの対策です。
サラリーマンや個人事業主で、この規定を知らずに、所得税の節税目的で投資用不動産を購入する人が多いので、十分注意しましょう!
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