贈与税は、一定の条件下で贈与を受けた場合に、贈与を受けた側(受贈者)に課税される税金です。
贈与税の課税対象になる財産は、①本来の贈与財産(民法上の贈与財産)と②みなし贈与財産(税法上で贈与を受けたと認定される財産)に区分されます。
特に、みなし贈与財産は、課税の公平の見地から贈与税が独自に定めている贈与財産のことで、贈与を受けた側(受贈者)が贈与財産と認識していないため問題になることが多いです。
今回は、贈与税の課税対象になる財産とは?みなし贈与財産とはなにか?について解説していきます。
贈与税の課税対象となる財産について
贈与税は、贈与を受けたすべての財産に対して課税されます。
ただし、以下の財産については、例外的に贈与税が課税されません。
- 法人からの贈与により取得した財産(所得税の課税対象)
- 扶養義務者からの生活費や教育費に充てるために取得した財産(日常生活で必要な範囲内)
- 個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品(社会通念上相当と認められる範囲内)
- 直系尊属からの贈与で住宅取得資金に充てるための財産
- 直系尊属からの一括贈与を受けた教育資金に充てるための財産
- 直系尊属からの一括贈与を受けた結婚・子育てに充てるための財産
- 相続や遺贈により財産を取得した人が、相続があった年に被相続人から贈与により取得した財産(相続税の課税対象)
なお、贈与税の課税対象となる財産については、①金銭で見積もれる本来の贈与財産と②贈与税法上独自に定められているみなし贈与財産があります。
本来の贈与財産(民法上の贈与財産)とは
本来の贈与財産(民法上の贈与財産)とは、民法で定められた贈与契約(口頭、書面)によって譲り受けた財産で、金銭で見積もれるものです。
本来の贈与財産には、以下のようなものがあります。
- 現金
- 預金
- 土地
- 建物(家屋)
- 株式
- 債券(国債・社債)
みなし贈与財産(税法上で贈与を受けたと認定される財産)とは
贈与契約(口頭、書面)をしていなくても、贈与と同じような経済的利益を受けたと認定され、贈与税が課される場合があります。
この場合に受けた経済的利益をみなし贈与財産といいます。
みなし贈与財産で贈与税が課税される場合があるのは、以下の場合です。
- 低額譲渡
- 債務免除
- 生命保険料
低額譲渡
低額譲渡とは、時価(その資産の市場価格)に比べて著しく低い価額(目安:50%未満)で譲渡することをいいます。
この低額譲渡を個人間で行うと贈与税の課税対象になります。
例えば、Aが昭和40年に1,000万円で仕入れた土地(現在の時価5,000万円)を令和6年にBに2,000万円で売却(=譲渡)した場合が低額譲渡に該当します。
この場合、Bに対して、3,000万円(時価:5,000万円-購入価額:2,000万円)のみなし贈与財産があったと認定され、贈与税が課税されます。
債務免除
債務免除とは、その名の通り、債権者が債務者の債務を免除することです。
この債務免除ですが、個人間の場合、みなし贈与財産に該当し、贈与税が課税されます。
例えば、平成30年にAがBに500万円を貸していて、令和6年にAがBに対して債務免除をした場合です。
Bの債務免除を受けた500万円に関して、みなし贈与財産となり、Bに対して贈与税の支払いが生じます。
ただし、Bが経済的な余裕がなく借金を返済することができない状態で、Aが債務免除をした場合には、Bに対して贈与税が課税されない可能性もあります。
生命保険料
生命保険料の受取人が保険料を負担せずに受け取った保険金はみなし贈与財産の対象になります。
最も多い事例としては、父親が被保険者(つまり保険の対象者)、母親が保険料の負担者、子供が保険金の受取人の場合です。
この場合で、父親が死亡し、生命保険金が子供に支払われた場合、保険料の負担者である母親から子供へのみなし贈与とみなされます。
よって、子供に贈与税の支払義務が生じます。
被保険者と保険料負担者と保険金の受取人の3者が異なる場合は、保険金の受取人に贈与税が課税されるということを覚えておいてください。
生命保険料は、①保険料負担者(=契約者)と②保険金受取人の組み合わせで課税される税金の種類が異なります。
以下の表で整理しますので、ご確認ください。
故人(被保険者) | 保険料負担者(契約者) | 保険金受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
父 | 父 | 母又は子 | 相続税 |
父 | 子 | 子 | 所得税(一時所得) |
父 | 母 | 子 | 贈与税(みなし贈与) |
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