相続とは、親族が亡くなった場合に、その他の親族の「誰か」が財産を引き継ぐことをいいます。
しかし、「誰が」相続財産を引き継ぐ権利を有するかについてはあまり知られていません。
今回は、「誰が」というところに着目して、相続財産を引き継ぐ人の範囲や順位についてみていきましょう。
法定相続人とは
亡くなった人が遺言書などで相続財産の分配を指定している場合を除き、「誰が」相続人になれるかは、民法という法律で定められています。
この相続人になれる人のことを法定相続人といい、具体的には、配偶者・子供・両親・兄弟姉妹が該当します。
相続人の順位
配偶者・子供・両親・兄弟姉妹の法定相続人間には、優先順位があり、より順位が高い法定相続人がいる場合、その下の法定相続人には相続財産を引き継ぐ権利はありません。
具体的には、配偶者は死んだ人と一緒に財産を築き上げてきた人であり、必ず相続人とされ、それ以外では、第1順位が子供、第2順位が両親、第3順位が兄弟姉妹となります。
例えば、配偶者と子供がいる場合には、両親や兄弟姉妹は相続人になれません。
また、子供がいない場合で、配偶者と両親がいる場合は、兄弟姉妹は相続人になれないことになります。
順位 | 法定相続人 | |
---|---|---|
1位 | 配偶者 (常に相続人になる) | +子供 |
2位 | +両親 | |
3位 | +兄弟姉妹 |
欠格と廃除とは
相続人の順位が上で、本来相続財産を手に入れる権利がある人でも、次の2つに該当する場合、相続権はありません。
- 欠格
- 廃除
欠格とは
欠格に該当する人は、被相続人(相続財産の譲渡を行う人)を殺害しようとしたり、騙したり、脅したりして相続財産を奪おうとした法定相続人です。
欠格に該当する場合、相続権がはく奪されます。
欠格事由については、以下の5つが民法891条で定められています。
- 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
- 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
- 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
- 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
- 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
廃除について
廃除に該当する人は、被相続人(相続財産を残す予定の人)を虐待したり、侮辱したりして、被相続人から家庭裁判所に申し立てが行われた推定相続人(≒法定相続人)です。
廃除に該当する場合、相続権がはく奪されます。
廃除事由については、以下の3つが民法892条で定められています。
- 被相続人に対する虐待
- 被相続人に対する重大な侮辱
- 上記以外に推定相続人(≒法定相続人)の著しい非行(被相続人の財産を浪費した場合など)
なお、廃除については、被相続人の意思で相続権のはく奪を行いますので、その取消しも被相続人の意思により行うことができます(家庭裁判所に廃除の取消し請求ができる)。
一方、欠格については、被相続人の意思に関係なく、相続権がはく奪されてしまうので、その取消しはできません。
代襲相続とは
被相続人(相続財産の譲渡を行う人)に子供がいた場合で、被相続人より先に子供が死んでしまっていた場合、孫が相続人になります。
子供が有していた法定相続人の第1順位を孫が引き継ぐ形になるためです。
これを代襲相続といい、第2順位の両親は相続人にならないため注意が必要です。
なお、子供が「相続放棄」をした後、被相続人の死亡前に子供が死亡してしまった場合、子供の意思が尊重され、代襲相続は発生せず、孫は第1順位の相続権を得られません。
この場合、原則通り、孫ではなく、両親が第2順位の相続人として相続財産を引き継ぐことになります。
また、子供に欠格・廃除があった場合でも、孫は代襲相続できます。
相続放棄・欠格・廃除があった場合の代襲相続の可否をまとめると以下のようになります。
相続権を得られない内容 | 代襲相続の可否 |
---|---|
相続放棄 | ✖ |
欠格 | 〇 |
廃除 | 〇 |
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