不動産の売買をする場合は、①不動産売買契約書の締結→②代金の決済・不動産の引渡し→③不動産の登記の順で手続きが行われます。
①不動産売買契約書の締結と②代金の決済・不動産の引渡しが別の手続きとして存在するのは、買主がお金を集めるのに時間がかかるためです。
では、①不動産売買契約の締結後、②代金の決済・不動産の引渡し前までの間にトラブルが起こった場合、どのような処理をするのでしょうか?
また、②代金の決済・不動産の引渡しを受けた後、不動産に何らかの瑕疵が発見された場合、どのような処理をするのでしょうか?
今回は、不動産売買時のトラブル防止手段(手付金、危険負担、契約不適合責任)について確認していきます。
手付金の授受
手付金は、不動産売買契約時に、買主が売主に対して支払う前払金のことです。
不動産売買契約が完了すると、基本的に契約が成立しているので、決済・引渡しや登記が済んでいなくても、契約を破棄することはできません。
ただし、買主は手付金を放棄すること、売主は買主から貰った手付金の2倍の金額を買主に返還することで不動産売買契約を破棄できます。
手付金の上限については、法律で定められているものはありませんので、一般的には、不動産の価格に応じて手付金の額が設定されます。
ただし、不動産売買で売主がプロ(宅地建物取引業者)で買主が素人の場合、不動産売買取引の経験に差があるため、手付金は売買代金の2割までという制限があります。
危険負担
危険負担とは、売主の責任ではない原因で、不動産が滅失してしまった場合の買主と売主の損害負担に関する決まりです。
例えば、不動産売買契約締結後に不動産が火災や地震などの災害によって被害を受けた場合、その損害は売主が負担することになります。
つまり、買主は不動産売買契約締結後、不動産の引渡し前に、購入予定であった不動産が滅失した場合は、代金の支払いを拒むことができることになります。
契約不適合責任
手付金の授受や危険負担は、①売買契約締結後で、②代金の決済・不動産の引渡しが行われる前までの売主・買主間のトラブル処理方法でした。
これに対して、契約不適合責任は、①売買契約締結後であればいつでも適用できる売主・買主のトラブル処理方法になります。
契約不適合責任とは、売主が販売した不動産が契約書に示された内容と異なる場合に、買主が売主に対して請求することができる権利のことをいいます。
不動産売買契約においては、契約書に示された条件と実際の不動産の状態が異なる場合があります。
例えば、建物の床面積が実際の床面積と異なる、ひどい雨漏りがしている、近隣の騒音や異臭で居住できる環境にないなどが該当します。
このような場合、買主は契約不適合責任に基づき、売主に対して以下の権利を行使できます。
- 不動産売買契約の解除
- 不適合部分の補修、不適合部分に対する減額請求
- 損害賠償請求(売主の帰責事由が必要)
ただし、不動産売買契約書や重要事項説明書に欠陥の内容が充分に記載されていた場合には、売主は買主に対して契約不適合責任を負いません。
また、契約不適合責任は、買主が瑕疵(=欠陥)を知ってから、1年以内に売主に通知しない場合、責任追及をすることができなくなります。
1年以内に通知する義務なので、通知さえ1年以内に行っておけば、2年経っても買主は売主に不適合責任を問えることになります。
ただし、契約不適合責任は、不適合を知った時から5年又は不動産の引渡し時から10年が経過した時に請求権が消滅します。
民法の大改正(2020年4月に施行)により瑕疵担保責任が契約不適合責任に変更になりました。よって、基本的には、瑕疵担保責任≒契約不適合責任になります。ただし、細かい違いは色々あり、結論が瑕疵担保責任の時代と異なる可能性があるので、不動産業務を行っている方は注意が必要です!
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