個人が土地・建物を売却した場合に利益(譲渡所得といいます)が出れば、所得税や住民税が課税されます。
今回は、①そもそも土地・建物の譲渡所得とはなにか、②短期譲渡所得と長期譲渡所得の内容と税率の違いについて説明していきます。
譲渡所得とは
個人の税金について定めた所得税法、住民税法では、所得を10種類に分けています。
そのうちのひとつが「譲渡所得」で、土地や建物などの資産を譲渡することによって発生する所得になります。
なお、所得とは、収入からその収入を得るために支出した必要経費を差し引いた残金のことです。
簡単に言えば、譲渡所得は、純粋に儲かった利益のことです。
また、土地・建物を譲渡した時の譲渡所得は、他の9つの所得とは分離して課税されます(分離課税制度といいます)。
【所得の種類】
- 利子所得
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預金利息を受け取った時
- 配当所得
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株式の配当金を受け取った時
- 不動産所得
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土地・建物を貸し付けて利益を得た時
- 事業所得
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事業を経営して利益を得た時
- 給与所得
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給料を得た時
- 退職所得
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退職金を得た時
- 山林所得
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山林を譲渡して利益を得た時
- 譲渡所得
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土地・建物を譲渡して利益を得た時
- 一時所得
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懸賞や福引が当たって収入を得た時
- 雑所得
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上記に当てはまらない収入を得た時
譲渡所得の計算方法
譲渡所得の計算式は以下の通りになります。
譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
譲渡価額とは、土地・建物の売却金額の他に、固定資産税精算金も含めるため注意が必要です。
固定資産税精算金とは、売主が不動産売買に先立ってすでに支払っている固定資産税を、不動産売買契約に基づき買主との間で精算した時のお金のことです。
土地・建物の売買では、土地・建物の売買金額とともに、固定資産税精算金も、「買主」が「売主」に支払うことが慣例になっています。
固定資産税は、毎年1月1日現在の所有者(売主)が1年分を支払うことになっています。例えば、4月1日に不動産売買取引が行われた場合、税法上は、売主が1年分の固定資産税を払いますが、本来の売主の負担分は1月1日~3月31日までの分で良いはずです。よって、不動産売買契約の時に、買主が負担すべき4月1日~12月31日までの固定資産税の精算手続きを売主と買主の間ですることになります。
取得費とは、売主が土地・建物の取得に要した金額+その後の設備増強に費やした金額-償却費相当額(土地の場合は0円)となります。
なお、取得費が不明な場合は、譲渡価額の5%を取得費とすることもできます(「できる」であって、「しなければならない」ではない!)。
譲渡費用とは、資産譲渡に直接要した経費で、①不動産会社に対する仲介手数料や②売主が負担した建物取り壊し費用などが含まれます。
なお、固定資産税や修繕費は、土地・建物の貸し付けにあたり発生した費用と認められるため、譲渡費用には含めず、不動産所得の必要経費になります。
短期譲渡所得と長期譲渡所得
譲渡所得に「一定の税率」を掛けることで譲渡所得に対する税額が計算できます。
なお、土地・建物の所有期間により譲渡所得は、短期譲渡所得と長期譲渡所得に区分され、「一定の税率」が両者で大きく異なることになります。
期譲渡所得の税率は所得税率30.63%、住民税9%の合計39.63%となり、長期譲渡所得の税率は所得税率15.315%、住民税5%の合計20.315%となります。
短期譲渡所得の税率は39.63%なのに対して、長期譲渡所得の税率は20.315%です。短期譲渡所得の税率は、長期譲渡所得の税率のほぼ2倍になっています。もし、土地・建物の譲渡の時期を調整できるなら、長期譲渡所得になるようにすると所得税・住民税の納税額を半分にできます!
なお、短期譲渡所得とは、「譲渡した年」の1月1日時点における所有期間が5年以下の場合で、長期譲渡所得とは、「譲渡した年」の1月1日における所有期間が5年超の場合です。
注意が必要なのは、譲渡日で短期か長期かを区別するのではなく、譲渡した年の1月1日時点で短期か長期かを区別するということです。
例えば、2025年12月10日に購入した土地を2030年12月15日に売却した場合、譲渡日である2030年12月15日では5年超経過していますが、譲渡した年の1月1日時点(つまり2030年1月1日時点)では5年超経過していないので、長期譲渡所得ではなく短期譲渡所得と判断されることになります。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の5年の計算方法を間違えると税金が倍になってしまうので、きちんと「譲渡した年の1月1日時点」で長期譲渡所得と短期譲渡所得の判断をすることを覚えておきましょう!
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