不動産を扱う前提条件として、不動産の個別性について知っておくことと、物権なのか債権なのかという権利の種類を把握しておくことが非常に重要になります。
そこで今回は、不動産の個別性について説明した後、不動産の権利の種類(物権と債権)について説明していきます。
見落としがちな基本的な論点ですが、不動産を扱う上で非常に重要になりますので、是非一度ご確認ください。
不動産の個別性について
不動産が他の金融資産(株式や債券)などと異なる点は個別性があることです。
例えば、ソフトバンクの株式は、全く同じ株式が世の中にいくつも存在し、同一の値段になりますが、同じマンション内にある広さが同じ部屋でも、北向きか南向きかで値段が大きく異なることになります。
よって、不動産を購入する時や売却する時は、不動産の個別性を理解するために不動産登記簿謄本(登記事項証明書)の確認や現地調査が非常に重要になります。
最近では、現地調査をしなくてもインターネットである程度の不動産の個別性を調べられてしまいます。例えば、不動産価格に影響する用途地域については、市町村や都道府県がホームページで公開しています。また、Googleマップを利用すれば、土地の高低差や前面道路の道幅なども推測できたりします。まずは、インターネットで情報を収集し、足りない部分を現地調査で補う方法を考えてみましょう。
物権と債権について
不動産の権利関係を理解するためには、物権と債権という2つの権利の種類を理解する必要があります。
物権とは、不動産そのものを所有する権利を意味し、具体的には、不動産の所有権、抵当権、地上権などがあります。
物権は、不動産の使用や処分を自由に行うことができる権利であり、第三者に対しても直接的に権利を主張することができます。
物権の権利者は、誰の承諾もなく、自由に物権を売買することができます。
一方、債権とは、不動産に対する金銭債権を意味し、具体的には土地に対する賃借権などがあります。
債権は、不動産の所有権を直接保有しているわけではないので、債権を売買する場合には、地主などの権利者の承諾が必要になります。
物権や債権は民法上の定義で、普段の生活ではあまり登場しない用語ですが、不動産の権利関係を理解するためには非常に重要な分類になります。
マイホームを購入する際は、所有権か借地権(土地に対する賃借権)かをきちんと確認しましょう。借地権(土地に対する賃借権)だと地代を地主に支払う必要があり、仮にマイホームを売却する場合でも地主の承諾が必要になります(その分所有権より購入価格は安くなりますが…)!
借地権、地上権、土地に対する賃借権の違いについて
今回の記事の中で、地上権と土地に対する賃借権という言葉が出てきました。
地上権も土地に対する賃借権も、地主から土地を借りて使う権利という意味では共通しています。
ただし、地上権は物権になるため、地主の許可が無くても地上権の売買ができます。
一方、土地に対する賃借権は債権になるため、地主の許可がなければ土地に対する賃借権の売買はできません。
つまり、地上権と土地に対する賃借権の違いは、地主の許可がなくても自由に権利を売買できるかどうかになります。
また、借地権は地上権と土地に対する賃借権の両方を含む定義です。
ただし、日本の不動産の売買実務では、よほどの例外が無い限り、土地に対する賃借権を借地権と呼んでいます。
地上権は、地主の土地に対する権利関係を著しく弱めてしまうので、地上権を設定している土地は非常に稀です。
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