NISA(少額投資非課税制度)は、近年の制度拡充に伴い、非常に使いやすくなっています。
しかし、どのメディアでも度重なる改正を反映させる形でNISAが説明されており、初めてNISAを利用する方にとっては非常に分かりにくい説明が散見されます。
今回は、過去のNISAの説明を抜きにして、現状のNISAの制度概要とメリット・デメリットを誰でも分かるように簡単にまとめます。
NISAとは
NISAとは、株式や投資信託の税金優遇制度のことです。
購入した株式・投資信託から発生した配当金や分配金に係る税金(20%)が非課税になり、さらに、株式・投資信託が値上がりした場合の利益に係る税金(20%)が売却時に非課税になります。
例えば、株式から配当金を10万円もらった場合、2万円の税金が控除され、8万円が手元に残ることになりますが、NISAで運用すれば2万円の税金が免除され、配当金10万円全額が手元に残ることになります。
NISAは、さらに内部で、①つみたて投資枠と②成長投資枠に分けられ、各々年間購入金額の上限(年間投資枠)や購入できる金融商品の種類を定めています。
ここからは、つみたて投資枠と成長投資枠の共通事項と個別事項を確認していきます。
共通事項
つみたて投資枠と成長投資枠の共通事項として、成人(18歳以上)ならば誰でも利用できます。
また、購入金額の上限(総枠)が1,800万円までと定められており、これを超えることはできません。
勿論、つみたて投資枠と成長投資枠の2つを同時に利用することもできます。
つみたて投資枠
つみたて投資枠は、個人資産の安全な増加策とされる長期分散積立投資を行うことを目的とした枠であり、投資対象も金融庁が認める一定の投資信託に限られています。
なお、金融庁が認める一定の投資信託とは、①信託報酬が低く、②いろいろな金融商品に分散して投資をするバランス型の投資信託となります。
よって、信託報酬が高い投資信託や、株式やREITだけに投資する投資信託はつみたて投資枠には含まれません。
このつみたて投資枠は、年間の購入金額を120万円までと定められています。
成長投資枠
成長投資枠は、つみたて投資枠のような目的がなく、自由に株式や投資信託を売買し、非課税枠のメリットを享受できる枠です。
そのため、国内外の株式や自由度の高い投資信託などにも投資ができ、様々な金融商品を組み合わせて資産を増やすことが可能になります。
ただし、いくら成長投資枠でも、①整理・監理銘柄の上場株式、②信託期間20年未満、高レバレッジ型、毎月配分型の株式投資信託は投資対象から除外されます。
この成長投資枠は、年間の購入金額が240万円と定められており、さらに合計で1,200万円までとの縛りがあります。
なお、誤解が多いのですが、NISA全体の限度額が1,800万円で成長投資枠の限度額が1,200万円なので、つみたて投資枠の限度額は600万円だと思われがちです。
しかし、実際のつみたて投資枠の限度額は1,800万円になります。
つまり、成長投資枠を利用せず、全額つみたて投資枠でNISAを活用することも可能ということになります。
NISAのメリット
NISAのメリットは以下の3点になります。
- 配当金・売却益に対する税金が非課税になる
- いつでも換金可能
- 少額から長期分散積立投資が出来る
配当金・売却益に対する税金が非課税になる
上場株式や投資信託から配当金や分配金を貰ったり、上場株式や投資信託を売却して利益が出た場合、20.315%の税金が発生します。
しかし、NISAを利用している場合には配当金・分配金や売却利益からは税金が発生しません。
いつでも換金可能
NISAを利用するためには、証券会社でNISA口座を作り、株式や投資信託を購入するだけです。
また、NISA口座内の株式や投資信託に対しては、売却に対する制限はないので、お金が必要になった場合はいつでも株式や投資信託を売却して換金することができます。
NISA(主につみたてNISA)と似た制度にiDeCo(個人型確定拠出年金)というものがありますが、iDeCoは老後資金を積み立てる目的があるため、仮にお金が必要になっても換金することができません。
NISAもiDeCoも余剰資金で行うことが前提になりますが、早急にお金が必要になる可能性があるならば、NISAで運用することをお勧めします。
長期分散積立投資が出来る
NISAは月額100円程度から積立投資を行うことができます。
さらに、つみたてNISAの投資対象は金融庁が認めたバランス型の投資信託のため、長期分散投資を行うのに適しています。
投資初心者が安全に財産を増やしていくには、少額から始める長期分散積立投資が適しており、NISAはうってつけの制度になります。
NISAのデメリット
まず前提条件として、株式や投資信託は預金と違い、元本保証の金融商品ではないので、NISAを利用しても、当然、元本毀損のリスクを負います。
一般の証券口座で株式や投資信託を運用し、元本毀損が生じた場合、元本毀損部分に対しては、救済を受けることができます。
ところが、NISA口座で株式や投資信託を運用し、元本毀損が生じた場合、救済を受けることができません。
例えば、A株式を30万円で購入し、20万円で売却した場合、10万円の損失となります。
一般の証券口座の場合は、この10万円の損失は当年度の他の株式などの利益や翌年以降3年間の利益と相殺することができます。
しかし、NISA口座の場合は、この10万円の損失は損失で確定し、当年度の他の株式や翌年以降の利益と相殺することはできません。
専門用語で言うと、NISA口座では、損益通算や繰越控除を受けることが出来ないということになります。
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