相続税は、死亡した人の財産を相続や遺贈によって手に入れた場合に、その手に入れた財産に対して課税されます。
相続財産として、すぐにイメージできるものとしては、現金・預貯金・土地・家屋・株式・宝石などがあります。
しかし、中には「そんな財産が相続税の課税対象になるの?」というものもあります。
そこで、今回は相続税の課税対象になる財産とはなにかについてみていきましょう。
相続税の課税対象となる財産
結論から言うと、相続税の課税対象となる財産は次の3つになります。
- 本来の相続財産
- みなし相続財産
- 一定の生前贈与財産
それぞれの内容についてみていきましょう。
本来の相続財産
本来の相続財産とは、相続や遺贈によって手に入れた財産の中で、金銭で見積もることができるすべての財産のことです。
遺贈とは遺言により相続人予定者以外の人に財産を無償で譲ることで、他人に相続財産を引き継がせたい場合に利用します。
本来の相続財産の代表例は、現金・預貯金・有価証券・土地・借地権・家屋・株式・宝石などになります。
借地権とは、家屋をを所有するために土地を借りる権利のことです。都心部の借地権には財産価値があり、相続税の課税対象になるため注意が必要です!
みなし相続財産
みなし相続財産とは、本来の相続財産ではないものの、相続や遺贈によって財産が移転したと「みなされ」、相続税の課税対象の財産となるものです。
みなし相続財産の例としては、死亡保険金や死亡退職金があります。
例えば、死亡退職金は亡くなった後に会社から支払われるもので、亡くなった人が所有していた財産ではないので、本来の相続財産に含まれません。
ただし、財産を手に入れる人から見ると、相続・遺贈によって手に入れた財産になるので、相続税の課税対象になる財産に含まれます。
なお、死亡保険金や死亡退職金はみなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、以下の非課税枠があります。
【死亡保険金の非課税枠】
500万円×法定相続人の数
【死亡退職金の非課税枠】
500万円×法定相続人の数
併用できます!
死亡保険金の非課税枠と死亡退職金の非課税枠はまた、死亡保険金については、保険料の負担者と保険金の受取人の組み合わせで対象となる税金が異なっており、すべての死亡保険金が、みなし相続財産として相続税の課税対象になる訳ではありません。
保険料の負担者と保険金の受取人が違う場合のみ、みなし相続財産として相続税の課税対象になります。
死亡保険金の対象税金の種類については、以下の図のようになります。
被保険者 (保険の対象者) | 保険料の負担者 | 保険金の受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
父 | 父 | 子供 | 相続税 (みなし相続財産) |
父 | 子供 | 子供 | 所得税と住民税 |
父 | 母 | 子供 | 贈与税 |
一定の生前贈与財産
本来の相続財産とみなし相続財産が相続税の課税対象になるのは、民法という法律の決まりに基づくものですが、一定の生前贈与財産が相続税の課税対象になるのは、過度な相続税の節税対策を予防し、租税の公平性を担保するためになります。
贈与税には、毎年110万円までの非課税枠があり、例えば、父から子供へ毎年100万円ずつ10年間に渡って贈与を行っておけば、贈与税が無税のまま、相続財産を1,000万円(100万円×10年)減額出来ます。
しかし、生前贈与を行ったか行わなかったかで、相続税の課税対象となる相続財産に差が生じるのは、公平性に欠けるため、一定の生前贈与財産に関しては、相続税の課税対象となる財産に加えられる措置が取られます。
具体的には、亡くなった人が相続人(この時点では相続予定人)に生前贈与した財産で、生前贈与した日から7年以内に相続が発生した場合、その贈与した財産については、相続税の課税対象となります。
なお、すでに贈与税を過年度に納税している場合、相続税額から過年度に支払っている贈与税額を差し引くことができます(贈与税額控除といいます)。
贈与税額控除が存在するのは、同じ財産に対する贈与税と相続税の2重払いを避けるためです。
一定の生前贈与財産として相続税の課税対象になるのは、あくまで相続人(相続財産を引き継ぐ人)に対する生前贈与です。つまり、相続人以外の人(他人)に生前贈与をして、7年以内に相続が発生しても、相続税の課税対象にはなりません(過年度の贈与税の納税で完結します)!
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